IN THE WORKS No.001

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Lily-Leather

大城 秀林 / Lily-Leather
1978年2月 大阪生まれ
レザーアイテム製作における全工程を一手に行う革職人。「Lily-Leather」オーナー。
カービングやぼかし染めなど様々な技術を駆使して生み出す製品は財布やバッグのみならず、多岐多様に渡る。飽くなき探究心と溢れる好奇心が手掛ける作品全てに愛を注いでいる。


「好き」のコンパス

初めて会った時からその印象は変わらない。少年のような人なのである。

「職人」と聞くと、専門的な知識や用語を知っていないとコミュニケーションが取れないんじゃないか、こちらの要望を聞いてくれるだろうかと心配になっていたのだが、大城さんは違った。

「かっこいい」、「おもしろい」、「いい感じ」がキーワードなのである。それはまるで、小学生男子同士が好きな昆虫について語り合う時のような感覚。難しい話はあまりせず、お互いの「好き」を暴露しあう放課後のような時間だった。
それもそのはず、アメリカンバイク・革ジャン・レザークラフト大好き青年の“好き”が高じて「Lily-Leather」は生まれたのである。

若い頃から建築業に携わりながらもレザーアイテムを作り続け、今もなお追求し続けるレザーカービングにも出会った。革工房にも勤め、技術や知識を磨き、2009年に独立。子供も生まれ、「革で食っていく」人生がスタートしたのであった。

「好き」で始めたことだからこそ、妥協はできない。

Lily-Leatherの強みは何と言っても、「全工程を熟知している」ことにある。
自社の製品についても全てを知っているため、何を聞いても答えてくれる。また、カスタムやフルオーダーにも丁寧に対応してくれる。

パターンを作り、切って縫って、磨いて染めて、カービングもする。これだけの工程を全て自分で行う職人は数少ないのだそうだ。自宅兼の工房を見渡しても機械と器具と素材の宝庫で、製作の1から10までをここで行う。男なら誰もが憧れる作業場が自宅の中にある。

分業制のほうが効率も良かったりするのだろうが、そこはやはり“製品を仕上げる喜び”と“納得いくものしか出さない”姿勢がそうさせるのである。
1点もののフルオーダーに関しても根気よく付き合ってくれる。
お客様からのアイデアや要望をしっかりと聞き出し、商品に反映させていくその過程は家内制手工業の極みであり、知識と技術に裏打ちされた自信である。

「好き」で自分のものを作り始めた頃と変わらない、革に対する愛情と製品を手にした時の喜びを素直に共有させてくれる。

イライラのあとに、ワクワクする

「THE おおらか」のような雰囲気の大城さんも製作の中でうまくいかない部分があったりするとイライラすることもあるのだという。でもそれはすぐに、やる気に変わる。うまくいかないからこそ、探究心や向上心は育つ。自分の未熟さに苛立つことが、真摯に向き合うキッカケにもなるのだそうだ。

受注や打ち合わせ、納品が重なってなかなか時間が取れない時は移動の車中でリセットするのだという。
「定休日や定時がないぶん、スケジューリングがすごく大事。」

建築業時代のクセで今でも4時や5時に起きて作業をすることが多いという大城さん。家族がまだ寝ている時間に商品のデザインやアイデアが浮かんだりすることも多いのだそう。そしてまた、趣味のランニングやフットサル・サッカーも貴重なリセットの時間なのだ。

革の地図にカービングをしていく

百貨店での催事出店や受注品の生産の他、個人のオーダー品も受けている。
花屋さんからのハサミを入れるケース、ずっと使っていた財布と同じ形の財布、和太鼓のバチを入れるケースなど、お客様による要望は様々で、でもそれがまた勉強になったり、商品化に繋がったりもするのだそう。

「革のことをあまり知らないからこそ言える要望や意見」こそが思いもよらぬ出来栄えに繋がったりもするのである。単品フルオーダーを敬遠する職人が多い中「勉強も兼ねて取り組んでいる」という大城さんのスタンスは挑戦であり、探検であり、大いなる冒険なのである。


【編集後記】
以前から雑談はするものの、こうやって改めて話を伺うのは初めてだったので、すごく有意義な時間が過ごせました。最中にちょうど小学生の長男くんが学校から帰ってきて、ランドセルをドサッと床に置いた瞬間、「あー、これか、やっぱり原動力は!」と。床に置かれたその作品は、本革のアメリカン模様のなかなかちょっと重たそうなランドセルでした。息子も親も、まだまだ現役の「放課後」なのです。(笑)

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