大槻一博 / MAHOT COFFEE
1985年7月 大阪府豊中市生まれ
“いつでも試飲ができるコーヒーショップ”「MAHOT COFFEE(マホットコーヒー)」店主。豊中市曽根にて、自宅を改装した自家焙煎コーヒーショップを営む。道すがらに目が合うような距離で本格的なコーヒーが楽しめ、豆や器具の販売も行っている。
最新情報はこちら https://mahot.jimdo.com/
ネットショップはこちら http://mahot.thebase.in/
どうぞ、という“間”
隙間、合間、時間、空間。マホットコーヒーの「マ」は、日本語の「間」なのである。
それは誰かを待つ時間であったり、家事と家事の合間であったり、休日の午後であったり、雨の日のリビングだったりする。私とあなた、君と僕、午前と午後、晴れと雨。
言い換えればそれは「距離」に他ならない。
これだけコーヒーショップが溢れ返っているご時世に、お世辞にも(商業地として)好立地とは言えない場所でひっそりとしっかりと佇んで続けてこられているのは、大槻さんが作り出す「時間・空間・距離」、そしてそれをしっかりと繋ぐ“コーヒー”の賜物だと思う。
街へ出ればコーヒーショップが連なり、イベントに行けばコーヒーが飲めて、ネットでも気軽に買える。こんな時代に必要なのは、コーヒーを介したコミュニケーションだと思うのだ。結局のところ、人と人との“間合い”なのである。
いつでも空いている、こだわりの一席
飲食業やサラリーマン、販売・営業などをされてきたという大槻さん。これまでの経験の中で“ホッと一息つく習慣”の必要性を強く感じたのがキッカケでお店をオープンさせた。
そういったライフスタイルの提案、それをより豊かにするコーヒー時間、それを取り入れるための心の余裕。大槻さんと話をしていると、「まずこちらの話を聞いてくれて、そのあとに控えめに話をしてくれる」という印象を持つ。相手のためのカウンター席をひとつ、目の前に用意しているのである。
難しい説明書きやウンチクを使ってコーヒーの価値を説き伏せるのではなく、誰にでも簡単でわかりやすく、コーヒーを暮らしに馴染ませてくれる。「いつでも聞いてくださいね」という“間柄”もマホットにはパッケージされているのだ。
仕入れてくるのは、コーヒーだけじゃない
世間知らずにならないよう、休日にはあちこちへ出かけるという大槻さん。趣味でもあるDIY(お店の棚や雑貨も手作りされているそう)のネタ探しや飲食店観察、街を歩けばヒントに満ち溢れているのだそうだ。
「聞き手にまわる」のは人に対してだけではなく、人が作り出した建物やデザイン、経営手法や心持ちにまで渡る。学ぶ姿勢というか好奇心旺盛というか、聞く耳・聞ける耳をしっかりと持ち合わせているのである。
モノ・コトを自分の目や耳で判断し、それを持ち帰ってはお店で試してみる。
お客さんとの間合い、お店という空間、ホッとする時間。
「コーヒー豆を売る」のではなく、大槻さんは「間」を扱う人なのである。
伸び白の先には、相手がいる
それは先にも言った“ひと席空けておく”ことに通ずるのかもしれない。自分で自分を埋め尽くさない、相手の踏み込める余地を空けておくこと。頭も体も心も、自分だけのわがままでは動かない。
自宅ガレージのオープンカフェから始まった大槻さんのMAHOT COFFEEは、まだまだ未完成なのだそう。「こういう店をしたい!」という自己発信型の手法ではなく、あくまでお客さんや町との関わりの中で作り上げていくそのスタンスこそが大槻さん自身の等身大であり、1ミリも背伸びしていない視線の先には常に相手がいる。
その間合いを埋めるのが、コーヒーの湯気や香り、朝方に立ち込める香ばしい煙なのだ。
【編集後記】
以前から名前は知っていたんだけど、ひょんなご縁から色々と話すようになりました。同業で、作りたがりで、メガネ好き。僕が勝手に親近感を持っちゃっているんだけど、お喋りで自己発信タイプの僕とは違って、控えめで聞き入るタイプの大槻さんのお話はとても勉強になりました。時間でも空間でも人間関係でも、「間を大切にする」ということは、「距離を詰めすぎない」っていうことなんですよね。