IN THE WORKS No.003

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booworks

渡邉 航一郎 / booworks
1981年2月 大阪府豊中市生まれ
手織り作家・テキスタイルデザイナー、「booworks」代表。かたんかたんとテンポ良く生み出される手織り素材は、あらゆる製品に形を変えてゆく。「糸で人を繋ぐ」ことをモットーに、関西を中心としたイベントにも出店中。ワークショップも精力的に行っており、手織りをより身近に感じさせてくれる。
website http://www.booworks25.com/


糸に“空気”を含ませる

手織りだなんだと言っても、渡邉さんを語るうえで一番重要なポイントはその“空気”にある。
「服部に手織り雑貨のお店ができた」と聞いた時、真っ先に浮かんだのが“ハンドメイド好きな女性”だった。
苗字しか聞いていなかったので、数回のメールのやり取りも、てっきり女性だと思い込んでいた。

人を介して初めてお会いした時に数秒の沈黙の後、やっと理解できたのである。
「あ、そこそこの“おっさん”なんだ…」と。

同じ町で商売をし同世代ということもあり普段からしょっちゅう会うのだけれど、知れば知れほどの“空気感”。極端な話、ラーメン屋だろうが整骨院だろうが、渡邉さんは渡邉さんなのだ。

テキトーなのに信念があり、雑なくせにきちんと締める。
パーフェクトではない、そのちょっとしたズレやスキマに“らしさ”を感じる。

もちろんそれはアトリエの雰囲気や作品の質感、ちょっとしたポップやSNSの投稿にまでしっかりと反映されている。表向きは「手織り作家booworks」であるが、本質は「渡邉航一郎商店」なのである。
渡邉さんの布には糸や色だけじゃなく、人や空気が織り込んであるのだ。

人生に経験を織り込み、人柄が生まれる

高校卒業後、芸術・ファッション系の短大へ進んだ渡邉さんは「粟辻博」というテキスタイルデザイナーの存在を知り、本格的に生地や素材を生み出すことに興味を持ち始める。

しかしながら、短大卒業後はどうしていいかわからず、本人曰く“暗黒時代”に突入する。住むところ・職を転々とし、悶々とする日々。周りと自分を比べ、焦っては往々と彷徨うが、24歳の春に意を決して「川島テキスタイルスクール」に飛び込み、手織りをスタートさせた。

手織り作品を作りながら様々な人と出会い、様々なプロジェクトにも参加してきたという渡邉さん。自身が主催する“ススマルシェ”や各地の雑貨マルシェ、百貨店などにも精力的に出店している。
そこで出会った人が魅了されるのは「人柄」であり、その柄はしっかりと生地に織り込まれているのである。

「常に心に余裕を開けておく」と言うように、いつ話しかけても耳を傾けてくれる、そっと受けてくれるような雰囲気は“暗黒時代”を経験したからこその余裕であり、優しさなのかもしれない。

糸と人。

booworksのセンスを象徴する商品に「ご当地ブローチシリーズ」がある。

手織り製品というとバッグやストールなどを想像しがちであるが、“丹波の黒豆”や“岡山の桃”などを模ったブローチはシリーズ化しており、さらに今後も展開していくそうだ。

そもそものキッカケは、遠方に出店した際に「地元の人が喜んでくれそうなものを」と考え作りだしたのが始まりで、そういうサービス精神が実に渡邉さんらしい。商品の展開やポップの言葉選びにしても、本人の人柄が生地の柄と相まって独特の世界に仕上がっている。

一方通行の販売接客業ではなく、あくまで人と人との間に、糸や織りがあるのである。

<体験>にこそ、“柄”が出る

booworksの良さは、“距離感”だと思う。

簡単に「触らせてくれる」のである。アトリエショップでは不定期で手織り体験講座を開催されていたり、各地でのワークショップも行っている。講座・教室とはいえ、ああしなさいこうしなさいではなく、ただただ触らせてくれる。「やってみたい!」をやらせてくれるのである。

糸選びも、柄も、織りも、自由。手順だけをきちんと導いてくれるだけで、あとはいつもの空気感で見守ってくれる。
「人柄が布に出る」のを渡邉さんが一番楽しんでいるようにも見えるのだ。
ここでもやっぱり大切なのは“人と人との繋がり”であり、その間にはいつも「糸」がある。

余白の多い、“こだわり派”

普段接しているとどうしても「ゆるい」イメージを持ってしまうのだが、アトリエや製品の隅々には随所にこだわりが見られる。そして、押しても動かないような「頑固さ」もbooworksを支える柱である。

自然と人が集まる“やわらかい”空気と、それをきちんと維持するための“こだわり”。この両極とも言える二面性のバランスがbooworksのカラーであり、ブランドなのだ。

人を受け入れ、人に合わせながらも、自身はブレない。軸をしっかり持っているからこその揺れ幅であり、真ん中を知っているから戻ってこれるのである。

しなやかに、ほがらかに。
苦労と共に歩んで、その道を行く覚悟があるからこその、“余白”であるように思う。


【編集後記】
僕と1つ違いの渡邉さんはほぼ同時期を過ごした世代なので、インタビューをする中で共感できる部分がものすごくありました。テキスタイルスクールに入学した時、僕がちょうど喫茶を始めた時期だったり。あの時代の悶々とした気持ちやそこから積み上げてく人生。振り返ってこそわかる若き自分の苦悩、今の自分の位置。今回は僕も喋りすぎてしまったんだけど、こういったトークセッションもまた新鮮でした。

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