コーヒー豆の販売をしている「64ROASTERS」ですが、今のところメニューは3つしかありません。
・モカを中心にあっさり爽やかで香りが突き抜ける「CB」Clear Brown.
・ブラジルとコロンビア、その周りを固めるガテマラとメキシコ、これぞコーヒー!な「GT」Good Taste.
・マンデリンとモカをこれでもかと煎りあげた昭和喫茶のストロングコーヒー「SR」Strong Roast.
バイクの型式のようなこの品番(まぁその通りなんですが)をまとった、ブレンド3種のみを販売しています。
サードウェーブだのスペシャルティだのシングルオリジンだの言われるこのご時世に、あっさり・こってり・こっさり(その中間)のブレンド3種のみで勝負するなんて…とよく言われるんだけど、これには理由があるんです。
まず、「生まれも育ちも喫茶店」だということ。
実家も喫茶店だし、それ以外にもバイトで数店、喫茶をしました。ぜんぶ、それなりの歴史があるお店です。
逆に「カフェ」では一度も働いたことがありません。コーヒーと煙草、新聞と雑談、そんな中で育ちました。
喫茶店ではコーヒーを注文する時、「ホット」か「アイス(または、冷コ)」くらいしか言いません。
サイズもないしトッピングもアレンジもないし、なんなら何も言わずにいつもの席に座ればコーヒーが出てくるような文化です。
あったとしても、「マイルド」か「ストロング」くらい。
個人経営の昭和からある喫茶店って、だいたいそうなんじゃないでしょうか。
もちろん、いろいろ選べて事細かに対応してくれるお店もありますけどね。
そして、そのお店の「ブレンドコーヒー」はお店の顔とも言うべき商品なのです。
なんせ「出汁」のようなもんなんだから、これが口に合わなければ何ともならないわけです。
でも、口に合えばずっと通えます。選ぶ必要もないし、安定して売ってるので切らしません。
コーヒーのあれこれを考えなくて良いぶん、新聞や考え事に集中できます。
長く通えば、何も言わずともコーヒーが出てきます。
また、自分が好きになったその「コーヒー」について、ほとんどのお客さんが多くを知ろうとはしません。
ブレンドの配合は何か、割合はどうか、産地や農園は、焼き具合はどうかとか、もう12年も毎日コーヒーを淹れてますが、追求してくる人はかなり稀です。もちろん、聞かれれば正直にお答えしますし、隠し事でもなんでもないんだけど。
ここはやっぱり、お店とお客の信頼関係というか、「おいしいかどうか?」くらいで判断されているんじゃないかと思うんですよ。
ドアが開いて顔を見たとたんに「ぬるめのホットを薄めで8分目、砂糖なしのフレッシュのみ」がパッと出てくるか、喫茶店においてはそっちの方が大事なくらいです。
好きなコーヒーと信頼できる人(店)、ここに対して、人が集まってくるんだと思うんです。
僕が見てきたコーヒーの風景はだいたいそんなものでした。
ここ最近はサードウェーブ(第3の波)といって、生産管理された農園の単一品種(モカやハワイコナなど)を浅く焙煎し、1杯ずつを丁寧に淹れ、香りや風味を楽しむ、ワインのような趣向が増えてきました。
今年の初めにコーヒーの勉強をしに東京へ行ったんだけど、流行りのお店はそういうところが多かったです。
「ホットコーヒーで。」と注文しても、そっからが長い(笑)
品種も焙煎度合も挽き方も淹れ方も、多種多様過ぎて注文するのに疲れてしまうような感じです^^;
もちろん「選ぶ楽しみ」や「違いを楽しむ」ようなこともあるので、それが悪いというわけではなく、色々と飲み比べたり、新しい味にチャレンジすることもできるし、お店の人に教えてもらったり、勉強したりもできるわけです。
それこそ、探しても探しきれないくらいの種類や組み合わせがあります。
それがすごく楽しいという人ももちろんいるのだし。
ただ、僕にとっては「難しすぎた」という感じでした。
「同じ品種でも標高によって風味は異なる」と言われても、「じゃあ標高何メートルがおいしいの?」って思ってしまうんですよね。
日本の喫茶店をお手本にしたという、アメリカで生まれたサードウェーブコーヒーカルチャーをぐるっとひと回りして、改めて思ったのが「やっぱり喫茶やな!サテンやな!茶しばきに行かなあかんな!!」ってことだったんです(笑)
だから、64ROASTERSを始める時には、「自分が飲んで、おいしいなと思えるもの」と「浅・中・深の3種のみ」を作ろうと思いました。店にはシングルもスペシャルティもありますが、いろいろ並べて「好きなやつ選んでください~!」じゃなくって、「これが良いかなと思うんですけど。」っていう、“セレクト”の部分はこちらでやってしまおうと思ったのです。
濃いのが好きな人、アイスで飲む人は「SR」を選んでください。びっくりします。空腹時は避けてください(笑)
苦いのが苦手で、さっぱりと気分転換したい時は「CB」を。淹れたての香りは紅茶のようです。
なんでもええねん、おいしかったらええねんの人は「GT」を。僕はこれが一番好きです。冷めてもおいしいです。
コーヒーについての難しいことはこっちでやっちゃうので、あまり深く考えずにコーヒーを淹れてみてください。
コーヒーを片手に何をするか、誰と飲むのか、レポートの提出期限やあしたのこと、ドラマのあらすじやクイズの答えの方が大事な時だってあるはずです。
そんな時に、「標高何メートルにしようかな?」なんて不要なんです!!!(笑)
みなさんそれぞれの「コーヒーのある暮らし」にそっと花を添えるくらいの気持ちで豆を選んでますので、みなさんも「茶をしばく」くらいの気持ちで淹れてみてくださいな。
64ROASTERSのコーヒー豆はS&CRAFT STOREで買うことができます。
それぞれ、100gと200g、お好みに挽くこともできますし、カップに乗せるだけのドリップパックもあります。
お近くの方は店頭(喫茶ピーコック)引き取りもできますので、ぜひともご利用ください~!